企業の育てる右腕人材「社会福祉法人元気の里とかち」
十勝の企業が魅力的なのは、そこで働くメンバーが魅力的であるからにほかならない。社長の下で組織を支える「右腕人材」が経てきたキャリアと、その仕事についての特別対談。今回の対談は社会福祉法人 元気の里とかち。

社会福祉法人元気の里とかち
理事長 櫻井 博一さん
1997年に地域での福祉活動がスタートして以来、ボランティアやNPOとしての取り組みを重ね、2011年に社会福祉法人として組織化された元気の里とかちを長年にわたり牽引してきた。前職は地方公務員で、それまでに培った経験を活かして組織づくりや自治体との折衝を行う。趣味はキャンプで、冬でも楽しむアウトドア派。
社会福祉法人元気の里とかち
学童エリア長 佐藤 元(はじめ)さん
2014年入職。元気の里とかちでは、清流の里、複合施設奏の立ち上げに携わる。現在は学童エリアの施設のマネジメントを経て、2026年春より常務理事に就任予定。理事長の右腕として、組織の潤滑油となり未来を構想する。休日は帯広ラグビースクールのコーチを務めるほか、自らもラグビーで身体を動かす。
レールがないからこそ、自分で考え、挑戦できる社風。
帯広市、音更町、更別村に拠点を持ち、10ヵ所の高齢者福祉施設と4ヵ所の学童保育所を運営する、社会福祉法人元気の里とかち。グループホームや小規模多機能型居宅介護、サービス付き高齢者向け住宅、地域密着型介護老人福祉施設など、多様な暮らしの場を地域に提供している。
1997年にボランティア団体として活動を始め、2000年にNPO法人を設立。現場での実践を積み重ねた後、2011年に社会福祉法人へと移行した。立ち上げから現在まで組織を率いてきたのが、櫻井博一理事長である。
施設単位で「考える組織」を目指している点が、元気の里の大きな特徴だ。現場には裁量があり、判断が委ねられている。その象徴的な存在が、複数の施設立ち上げを担ってきた幹部職員の佐藤元さんである。今回は櫻井理事長と、2026年春から常任理事となり、将来的に後継者となる佐藤さんの2人に話を伺った。
まずは、法人の成り立ちについて教えてください。元々はボランティア組織からスタートされたそうですね。
櫻井 前身はボランティア団体でした。当時の日本の介護福祉は、大型施設に利用者を「収容する」という実態が強かったんです。私はその在り方に強い疑問を抱いていました。
転機は2000年、介護保険制度が始まったことでした。施設と利用者の関係性が「契約」という形に変わり、利用者の尊厳を守るスタイルへと国全体が動き始めたタイミングです。私たちは、音更の中古住宅を購入し、認知症の方々が共に暮らす「グループホーム」を作ることにしたのです。
当時はまだグループホーム自体、珍しかったのではないですか?
櫻井 国が認可を始めたばかりの時代でしたね。運営していくためにスタッフを6人募集したのですが、驚いたことに100人以上の応募があったんです。当時の福祉の在り方に疑問を持っていた専門職が、私たちが掲げる「新しい福祉」へのワクワク感に期待して集まってくれた。それが元気の里の原動力になりました。
その後、拠点を増やされていますが、創業当時から変わらないこだわりはありますか。
櫻井 一つは「地域に根ざし、小規模で営む」という点です。現在は特別養護老人ホームも運営していますが、30人未満の小規模な施設です。個人の尊厳を守るには、目が届く範囲であることが不可欠だと考えています。
もう一つは、料金設定です。サービス付き高齢者向け住宅も含め、低所得の方でも無理なく生活できる料金に調整しています。このコンセプトは昔から変わっておらず、そのため創業当時の資金繰りは本当に苦しかったですね。介護報酬が入るまでは、家賃は私の持ち出しでしたし、給料も満足に払えない時期がありました。それでも、利用料金を上げることはしませんでした。それは私たちの「思い」に反するからです。


その「ボランタリー精神」が、今も法人の根底に流れているのですね。
櫻井 そうですね。銀行からお金を貸してもらえず、苦しかった時代も、小規模福祉の考えに賛同して付いてきてくれた仲間がいました。お金儲けではなく、純粋に「助けてあげたい」、「福祉を面白くしたい」という情熱のもと、頑張ってくれたと思います。
2026年春から常務理事に就任し、名実共に法人のNo.2となる佐藤さんですが、入職時は異例のエピソードがあったとか。
佐藤 2014年のことですね。春に面接を受けたのですが、実際に入職したのは秋でした。
櫻井 当時、新施設「清流の里」の準備中だったのですが、まだ建設中で、数十人を一気に雇う資金的余裕がなかった。だから佐藤さんに「半年待てますか?」と直球で聞いたんです。
佐藤 驚きましたけど、面接で理事長とのインスピレーションが合ったというか、ここだ! という直感があった。待っている半年間は、トラックの運転手をしていました。
櫻井 佐藤さんはケアマネジャーの経験もあり、必ず組織の柱になってくれると確信していました。辛抱してくれたことには、今でも感謝しています。


中途採用で入職する方にとって、法人の雰囲気は一番気になるところです。
佐藤 うちには、良い意味でも悪い意味でも「明確なルール」がありません 。誰かが敷いたレールの上を歩きたい人には、少し難しい環境かもしれませんね。逆に、やってみたいことがある人には最高に面白い職場です。
櫻井 私は「考える組織」でありたいと思っています 。指示待ちではなく、現場で考え、それをパズルのように組み合わせていく。全員が0→1が得意でなくてもいい。1→10が得意な人とバランスをとって運営してほしい。規律を守るのが得意な人、大胆に判断する人、それぞれの個性を活かして役割分担をしたら良いと考えています。
かなり早くから副業を許可したり、外国人労働者を受け入れるなど、福祉業界としては先進的な取り組みもされていますね。
櫻井 副業は5年以上前から可能です。外国人スタッフも20名ほど活躍しています。福祉は特別な仕事ではなく、生活の延長線上にあるもの。ここで働いた経験が、将来自分の親の介護や、別の仕事に進んだときに活かしてほしい。福祉の経験がキャリアアップとしての通過点であっても良いと思っています。新しいことを嫌がらず、むしろ歓迎する土壌がありますね。


現在、スタッフは200名を超えるそうですね。組織が大きくなると、トップや幹部との距離が遠くなりがちですが、そのあたりはいかがですか。
佐藤 私は各施設に顔を出して、スタッフと与太話をすることに、とにかく時間を費やしています。悩みを聞いたり、雑談をしたり、そこから信頼が生まれると思うので。
櫻井 組織を束ねるマネージャー層とは週1回の会議がありますが、それ以外でも、みんなよく私のところに相談に来ますよ。大抵、私のところに回ってくるのは「正解がない」難問ばかり。でも、結論を出すこと以上に、話を聞くことが大事だと思っています。
「理事長が死んだらどうなるか」を話し合う機会もあったとか?
佐藤 「元気の里の未来を考える会」というものを開催しました。ショッキングなテーマですが(笑)、現場のスタッフからは「理事長がすごく近い存在に感じる」という声も出ています。
最後に、どんな方と一緒に働きたいと考えていますか。
櫻井 私は、働きたいという意欲がある人なら断りません。飲食店や携帯ショップなど、異業種からの転職者も多いですが、前職の経験はすべてプラスだと思っています。私はもう還暦ですから、これからの福祉は若い世代の感性に任せていきたい。10年後、自分自身がここの利用者になるかもしれない(笑)。その時に、決まりきった古いスタイルではなく、その時代に合った「新しい福祉」を作っていってほしいですね。
佐藤 私は素直な人と働きたいです。基本は考えて自分で動くスタイルなので、何でも吸収できる人が合っていると思っています。また、マネージャーと一般職員の「中間層」をもっと育てていきたい。各施設のNo.2を担えるような人ですね。遠慮がちな人も多いのですが、私たちがしっかり支え、持ち上げていくので、ぜひ一歩踏み出してほしいです。。成長意欲にあふれて、周囲に楽しい時間と仕事を提供することに楽しみを感じられる人が集まってくれたら、そんなにうれしいことはないですね。りと支えてていきたいですね。
会社データ
社会福祉法人元気の里とかち(清流事務所)
帯広市清流東4丁目4-10
0155-66-6230
9億1,000万円
205名(うち正職員114名)