企業の育てる右腕人材「株式会社クナウパブリッシング」
十勝の企業が魅力的なのは、そこで働くメンバーが魅力的であるからにほかならない。社長の下で組織を支える「右腕人材」が経てきたキャリアと、その仕事についての特別対談。今回の対談は株式会社 クナウパブリッシング。

株式会社クナウパブリッシング
代表取締役 高原 淳さん
1961年帯広市生まれ。大阪芸術大学卒。フォトグラファー、ライターとして雑誌を中心に活動。1989年制作会社(株)遊文館設立(東京・西荻窪)。2000年5月ソーゴー印刷(現・クナウパブリッシング)入社。同年12月代表取締役就任。2004年『northern style スロウ』創刊、2025年『しゅん刊とかち』公開。
株式会社クナウパブリッシング
取締役副社長 田中 良治さん
1972年帯広市生まれ。高校卒業後、東京のテレビ番組制作会社入社。報道番組などに携わり、20代後半でUターン。地元FM局やケーブルテレビ局(新聞社)で勤務し、さまざまな媒体での情報発信を経験。2013年ソーゴー印刷(現・クナウパブリッシング)入社。主にデジタルコンテンツ担当。趣味は食べ飲み歩き。
個々人の「得意」や「やりたいこと」を、地域づくりに活かす仕事。
十勝、そして北海道の地域情報を発信する会社として、「しゅん」と「スロウ」の2つのブランドを有する株式会社クナウパブリッシング。約70年前に印刷会社として創業、30年ほど前に出版業を開始。1998年に『月刊しゅん』を、2004年には『northern style スロウ』を創刊。その後は、動画制作、WEB制作、イベント企画運営、旅行業などへと事業領域を拡大しながら、多角的に情報発信を手がけてきた。その真ん中にあるのは、「地域のためになるかどうか」という視点だ。
東京一極集中の情報発信業の構造を変えたいと、地方から地域の豊かさを伝え続けてきた同社。その編集力・発信力の根幹には何があるのか。現役フォトグラファーであり代表取締役を務める高原淳さんと、動画カメラマンであり副社長の田中良治さんに話を聞いた。
田中さんはどういった経緯で入社されたんですか?
田中 入社前はフリーランスで動画制作をしていました。でも生活リズムが乱れてしまって。「朝、決まった時間に会社に行って働いて、夜に眠る」という暮らしに戻らないとまずいぞと思って(笑)、求人を探していたんです。そこで知人から「これいいんじゃない?」と教えてもらったのが、クナウパブリッシング(当時はソーゴー印刷株式会社)でした。
高原 田中が入社したのは2013年。景気対策と震災復興のために厚生労働省が緊急雇用対策を行っていた頃で、その事業を使って弊社も求人を出していました。コンセプトやイメージを言語化する能力が高く、動画の分野に力を入れていきたいという思いも持っていたので、すぐに採用を決めました。
田中 最初は十勝の求人情報誌の取材や原稿執筆、動画の制作などをやっていました。緊急雇用対策で8ヵ月間の短期採用だったのですが、その後も正社員として継続雇用していただいて、2014年からは本格的にカメラマンとして仕事をするようになりました。


会社のどういったところに魅力を感じていますか?
田中 働き始めた最初の頃から、経営理念に共感していました。「価値ある情報を創造・発信・記録することによって、豊かさと幸せの輪を広げます」というものなんですが、もうまさにこれだな、と。僕はフリーランスになる前にはテレビ局、ラジオ局、新聞社でも仕事をしてきたんですが、中でもここで作っている媒体は、誰の手に届くか、を大切にしているものが多い。別の職場で人の嫌な部分もたくさん見てきたこともあって(笑)、発信する情報が「誰にとっての価値なのか」を考えたものづくりをする働き方を魅力に感じています。
高原 田中の才能がよくわかる仕事としては、フリーマガジン『月刊しゅん』の巻頭特集と連動した、十勝の歴史を振り返る動画があります。それまでは動画に力を入れたいと思いつつやり切れていなかった部分があったのですが、誌面の特集を動画化する、ということの可能性を拓いてくれました。
田中 クリスマスケーキの写真をARで読み込むと360度と断面が見られるという動画も、かなり再生回数が伸びましたね。当時はひたすら企画書を書いていた気がします。動画に限らずですが、自分が考えた企画を実現できるというのが、面白い会社だと思います。


社員が自分のスキルを活かせる働き方ができる会社ということですね。
田中 そうですね。文章を書いたり写真を撮ったり、イベントを企画運営したり、商品のパッケージを作ったり。それに、直営店「SLOW living」では商品開発もショップ店員も、パティシエだってできる。今いる社員の人にも伝えたいことですが、「こうじゃなきゃだめだ」という発想をせず、やりたいことをいくらでもやれると思ってほしいです。
高原 会社の事業領域として「地域のため」という視点は大切ですが、基本的には社員それぞれが自由に企画を立てて良い。指示や命令があって行動するほうが楽だという人もいますが、僕は「そう言いつつも、本当は何かやりたいことがあるんじゃないの?」と思ってしまいます。特に、我が社の判断基準は「正しいか間違っているか」ではなく、「楽しいか楽しくないか」、「未来につながるかつながらないか」といったところなので、そうした発想で自分のやりたいことをのびのびやってもらえたらうれしいですね。
デジタル化の時代ですが、紙媒体の価値についてはどう考えていますか?
高原 もう20年ほど前からデジタルに舵を切らなければというのは感じていましたから、少しずつ紙媒体とデジタル媒体をミックスさせながら続けてきているという現状です。紙をデジタルに置き換えていくのではなく、両方を効果的に使うことで相乗効果が得られるのではないかと考えています。
田中 どうしても、紙VSデジタルという構造に捉えられますが、そうじゃないんです。たとえば弊社で出版している雑誌『northern style スロウ』は、映像や音声媒体にもすごく向いている。紙とデジタルが対立するものではないということは、今の社内にももっと浸透させたいですね。


これから力を入れたい分野、地域での目指す立ち位置をお聞かせください。
高原 私たちには「しゅん」と「スロウ」という、地域で育ててきた2つの大きなブランドがあり、その両編集部のフィルターを通して発信される情報には信頼感があります。情報が氾濫する時代においては、「誰が発信しているか」に重きが置かれますから、その点で、25年以上にわたって地域情報を深掘りして発信し続けてきた私たちの強みが活かせると思っています。今後は、そこから一歩先に進み、編集部メンバーが個人として「タレント化」していくことが理想ですね。
田中 今でも、編集部メンバーが個人でSNSを使って発信したり、ライブ配信や司会業なども行っています。そんなふうに個人単位で個性を活かしながら情報発信ができたらもっと面白い会社になっていくと思う。新聞の署名記事やラジオのパーソナリティも個人の名前を出していますが、それよりも、もっともっとお客様の身近な存在として、直接的に関わっていけるのがクナウパブリッシングの仕事の魅力でもあります。
高原 実は2006年頃に作った経営計画の中期ビジョンの中にも、すでに「一人ひとりのタレント化」という文言があったんですよ。でもなかなか実現できなかった。それが、10年以上経ってから少しずつ動き始めている実感があります。もはや組織の中の一部という感覚はいったん取り払って、個人個人が自分のやりたいことを思う存分仕事につなげて、その結果として利益を生み出してくれたら何も言うことはないですね。
情報発信業に関心のある人へのメッセージをお願いします。
田中 情報発信業って誰かの人生に影響を与えることができる仕事なんです。「未来を良くする」、「商売の助けになる」、「暮らしを豊かにする」といったポジティブな影響を与えられるのって、素晴らしいことですよね。しかも、今の時代は世界中どこにいてもその仕事ができます。東京がすべてじゃないし、日本がすべてでもない。加えて言うなら、表現者としては、地方での暮らしを一度は絶対経験したほうが良いとも思っています。不便なことがいっぱいあって、そこにさまざまな意味がある。便利なところでぬくぬくしていたら得られない経験値がたくさんあるんですよ。恐れずにあちこちに行って経験を積んでほしいです。
高原 どんな仕事を目指すにしても、何か一つ、技術を磨いておいたほうが良い。一方で、技術だけ飛びぬけてしまうと、形だけ「それっぽく」まとめることが簡単にできてしまうのですが、そういうメディアは全然面白くない。粗削りでも「とにかく伝えなきゃ!」という思いが伝わるようなものが面白いですね。磨いた技術を、自分が心底発信したいメッセージを伝えることに使ってほしいです。
田中 十勝は今、中心市街地や文化活動の活性化、公園の利活用などさまざまな形でのまちづくりに積極的に動いているところです。弊社にも、もっと積極的にこのまちに関わっていくということが必要とされています。この地域を作っていく一員としてたくさんの人と協業していきたいですね。
会社データ
株式会社クナウパブリッシング
帯広市西16条北1丁目25
0155-34-1281
3,500万円
4億円(25年9月期)
38名(うち正社員33名)