前田農産食品株式会社

前田農産食品株式会社
代表取締役 前田 茂雄さん
本別町出身。東京農業大学卒業後、テキサスA&M州立大学、アイオワ州立大学にて米国の大規模農業経営や流通を学び、Uターン。4代目として農場を受け継ぎ、「温故創新」をテーマに熱量高く事業に取り組む。
経営者の視点で紐解く、仕事と組織。
「農業は食でしか伝わらない」。前田農産食品会社・前田茂雄社長の言葉には、本別町に120年以上続く農家としての誇りと経営者らしい情熱があふれている。
農場の始まりは、明治32年(1899年)。その後、昭和26年(1951年)に法人設立し、農業生産法人としての歩みは2026年で75年目へ。4代目である前田社長のモットーは、「温故創新」。農場を築いた先代への感謝を胸に、伝統を変革へ挑戦する姿勢を表す言葉だ。新しく、創造する。前田農産食品の取り組みは、まさにその言葉を体現している。

代表的な事例の一つが、国産初の電子レンジ専用ポップコーンの開発という前例のない挑戦だ。「家族経営の農場から通年雇用の組織へと舵を切る上で、課題になっていたのが冬場の仕事でした。そんなときに思い付いたのが、国内産ポップコーンの開発。売上増加と雇用維持、それからお客様も我々も『わくわくする農業』の実現を目指し、挑戦を決めました」。前例がないだけに課題も多く、商品化まで4年の歳月を費やした。そんな苦しい時期についても、「ポップコーンが弾ける前に経営が弾けそうだった」と、ジョークを交えて語る前田社長。その明るさと向上心で組織を支え、2024年には製造数100万袋へ近づき、海外展開を行うまでに。十勝内外に前田農産食品の名を広めるきっかけとなった。

経営理念は『お客様と共に種をまき、共に育ち、わくわく感動農業を実践します』。大切にしているのは、小麦粉を使ってくれる全国のパン職人や、パンやポップコーンなどを楽しみに待ってくれる消費者への思い。パン屋やレストランのシェフ、バイヤーたちを畑に招き、現場のリアルを伝えているのもその一つ。「原料を作る畑があることが、農場の大きな強み。小売店やパン職人の皆さんには、どうやって栽培管理されているかを知ってもらえるし、社員には自分たちが育てた小麦が食卓へ届いているという実感を持ってもらえる。より安全で、よりおいしいものを届けたいという気持ちが生まれますよね。農から食へ。川上から川下までが見渡せることもやりがいにつながっていると考えています」。


熱量のある理想を掲げる一方、組織運営については論理的な一面も。その象徴ともいえるのが、月に一度、全社員で実施される「もやもやカイゼン会議」だ。「トヨタ式の『カイゼン活動』を取り入れています。現場の小さな違和感を『もやもや』と呼び、どう解決するかを全員で話し合う。吸い上げた課題については、いつ・誰が・どうやって解決するかまで落とし込んでいるんです」。上がってくるもやもやは、業務効率化に関することから日常的なことまで、実にさまざま。実際に社員からも「年齢や社歴に関わらず、意見が言いやすい」との声が上がっており、フラットな組織づくりにつながっている様子だ。
業務の拡大に伴い、さまざまな変化を遂げてきた前田農産食品。そんな今、前田社長が目指すのは、「人を活かす経営」だ。「今はまさに、多様性の時代。弱みを克服するのではなく、個々人の個性を存分に伸ばしていける組織でありたい。一人ひとりの力を足し算するのではなく、掛け算で大きな力にできるような組織づくりをしていきたいですね」。


十勝の畑作に携わる企業として、経営者として、前田社長が掲げるビジョン。それは、食文化を創り上げていくこと。「持続可能であるか、を考えない経営者はいないはず。農業が基盤であることは今後も変わりません。僕自身、ますやパンの杉山社長から『一緒に食文化を創ろう』と言われたときに気持ちのブレがなくなりました。単に小麦を栽培するだけでなく、それが多くの人に愛されていく文化を創る。それができれば、この先もずっと十勝の農業は残っていく。実現するためには、現場だけじゃなく、食卓までを見据えることが必要不可欠だと考えています。今は組織の中に3つのチームがあり、それぞれが大きなギヤとなり、助け合いながら仕事をしています。今いる仲間たち、そしてこれから出会う仲間たちと共に、明るい食卓文化を創っていきたいです」。
どんなときも〝わくわく感〟を忘れずに。120年続く農場から、豊かな文化が育まれる未来に向かって。

会社データ
前田農産食品株式会社
本別町弥生町27-1
0156-22-8680
200万円
3億1,000万円(2024年度)
13名(うち正社員8名)