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ワークライフとかち|北海道・十勝で働く!お仕事発見WEBマガジン
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「どこで、どう生きるか」の答えは一つじゃない。十勝のホテルが結ぶ多様なキャリア。

十勝・帯広の街づくりにおいて、いま独自の存在感を放つ経営者がいます。東京で20年以上にわたり飲食店を経営してきた坂口琴美さんは、11年前に帯広中心街の廃業した旅館を再生し、「HOTEL NUPKA(ホテルヌプカ)」を開業しました。起業、2拠点生活、Uターン、そして街づくり̶̶。さまざまなキーワードと共に、坂口さんのキャリアと思いを紐解きます。

語り手 坂口 琴美さん

株式会社十勝シティデザイン 代表取締役社長。1977年生まれ、幕別町出身。北の起業広場協同組合理事長、帯広中心市街地活性化協議会委員、帯広商工会議所観光サービス部会長、帯広観光コンベンション協会理事、「帯食べ歩きまち株式会社」への出資など、街づくりにも積極的にかかわる。

聞き手 田中良治さん

株式会社クナウパブリッシング 取締役副社長。街づくり会社「帯広食べ歩きまち株式会社」社外取締役。合同会社Renew代表。1972年生まれ、帯広市出身。とかちビアガーデンなど中心市街地イベントも多く手掛ける。

旅人と地元の人が交差する、街の文化拠点「NUPUKA」。

田中 坂口さんのキャリアは、東京での起業から始まっていますね。

坂口 はい。1999年に最初のお店を東京の足立区に構えてから約20年になります。2016年にNUPKAをオープンしてからも、しばらくは東京との2拠点生活を続けていました。現在は帯広を拠点としています。

田中 どこかに就職された経験は?

坂口 実は一度もないんです。

田中 いきなり起業だったのですか?

坂口 そうなんです。就職氷河期で、自分が入りたいと思っていたメディア系の新卒採用が難しかったり、私自身も大手企業への就職のイメージが湧かなかったりして。そんな時にアルバイト先の常連さんの「自分で店を持てばいいじゃん」という後押しもあり、思い切って共同経営をし始め起業しました。以来25年以上、東京で複数の飲食店を経営してきました。

田中 その経験が、今につながる「描いたものを形にする力」になっているのですね。

坂口 そうなんでしょうかね(笑)。ただ、親の反対を振り切って始めた商売だったので、「絶対に続けてみせなきゃ」と当時は寝る間も惜しんで働きました。若い女性経営者ということで悔しい思いもたくさんしましたが、そうした経験が今の自分を強くしてくれたと感じています。

田中 そこから、なぜ再び十勝に拠点を構えようと思われたのでしょう。

坂口 今から13年程前に、現在のNUPKAとなっている旅館が廃業していたという話を聞いたことがきっかけでした。それまでも十勝での出店の誘いはありましたが、ここがなくなったと聞いた時、「ここなら昼間から誰もがふらっと立ち寄れる場所を作れる」と直感したんです。根底にあるのは、「人と人を巡り合わせる、つなぐこと」、そして「人が集まること」が好きだという気持ちです。特別な記念日だけ来るような「非日常」の場所ではなく、ここに暮らす人たちが誰もがふらっと立ち寄れるような、あくまで「日常の延長」にある場所を目指しました。日常的な心地よい場所さえあれば、人は何度も足を運んでくれます。そうやって日々顔を合わせる中で生まれる「自然な会話」こそが、新しい繋がりを育むのだと信じています。現に、地元の方がふらっと立ち寄る際、ホテルに宿泊されているお客様との交流が生まれる場面もたくさんあります。

田中 最後に、坂口さんが描く「これからの十勝」について教えてください。

坂口 従来からも課題なのは、冬の滞留人口や消費需要を増やすことです。北海道の都市の冬の滞留人口は大幅に減少し、宿泊施設はどこもその時期は宿泊単価が下がり光熱費や人件費の「下敷き」になってしまい、経済の循環が鈍くなる。そこを変えない限り、通年雇用も難しく、商売を継続できなくなってしまいます。そうなると、働く側のマインドが育ちにくいということにもなります。制度的なことを理由に働く時間をセーブする人も多くいます。働くことの意味が、自分らしくあるための手段になってほしいと願っています。

田中 北国の大きな課題ですね。今後はどのような展開を?

坂口 その状況を改善する鍵のひとつが「馬」だと思っています。今は「馬車BAR」という事業を行っていますが、私はこの日常の中に、もっと馬がいたらいいなと本気で思っているんです。単なる観光コンテンツではなく、かつて耕作や移動など馬が生活に不可欠だった十勝の歴史、また、現代のエネルギー資源の観点からも、今でも馬はこの土地で暮らす人たちの大切なパートナーになり得る存在だと考えています。日常の風景の中に馬がいたり、すぐそばに農業の現場があって生産者と触れ合えることなど、十勝ならではの日常こそが、外から来た人にとっても一番の価値になり、十勝の本当の豊かさを感じてもらうことにつながると思います。

ばんえい競馬の引退馬が引く馬車で、帯広の街なかを巡る「馬車BAR」。NUPKAオリジナルクラフトビールや地元食材を味わいながら、蹄の音に耳を傾ける豊かな時間。馬と人が共生するこの街ならでは特別な日常。
田中さん

働く形や生活の形に、本来正解はありません。就職、起業、フリーランス、ダブルワーク、U ターン、I ターン、2拠点生活……。自分に合ったスタイルを自由に選んで良いものです。新しいことへ飛び込むことには誰しも不安を伴いますが、自分の「やりたいこと」の軸があり、それが日常になる姿を想像できれば、自分に合った「自分だけの生き方」を見つけることができる。坂口さんのお話からは、そんな確かな勇気を感じることができました。

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