仲間と一歩を踏み出す、十勝発・実践型起業支援プログラム「TIP」

とかちイノベーションプログラム「TIP」とは

とかちイノベーションプログラム(以下TIP)は、帯広信用金庫が主催し、十勝管内19市町村による共催、とかち財団や野村総合研究所などが協力し、2015年からスタートした実践的な起業支援プログラムである。地域において起業を目指す人を対象にしており、これまでに通算10回開催されてきた。「何かやってみたいけれど、どうしたら良いかわからない」という思いを拾い上げ、まずは0から0・5を生み出すことを目的としている。

TIPの特徴はチームを組んで構想発表を行うところにある。事業主の「主犯」と、共同創業者の「共犯」、手助けする「サポーター」の3つの役割に分かれて複数名でチームを組む。主犯になれなかったとしても、共犯で学ぶことは大きいし、あえてサポート役をやり続ける人もいるという。参加者の業種はさまざまで、新たな視点に気づくことができるのが最大のメリット。他地域で実施される同様のプログラムで、費用がかかるところもあるが、TIPの参加費はなんと無料。十勝に居住していなくても参加可能で、札幌や釧路から足を運ぶ人もいるという。また、女性の参加者が多いのも十勝の特徴。プログラム参加時に利用できる託児サービスもほかにはない機能であり、子育て中の人も参加しやすくなっている。

プログラムは全12回。毎年7~11月に開催されている。50~60名ほどが参加する。

これまでには、ばん馬が馬車で街中を練り歩く観光プログラム「馬車BAR」、野菜などの端材を活かして紙やキャンドルを作る「やさいくる」、ハンターと料理人や消費者をつなぐプラットフォーム「Fant」といった地域性を感じる事業が生まれてきた。その中から24件が事業化し、うち15件は法人化しているという。十勝という人口30万規模の地方の10年間の実績としては、かなり多いと言えるだろう。直近の第10期で発表された事業構想にも、ユニークなアイデアがずらりと並んだ。手入れのされていない山林に林道を付けて資産に変えるサービスや、従業員50人以下の企業向けの保健師派遣サービスなど9チームの発表があった。

米沢則寿帯広市長(写真左)とTIP開発者の野村総合研究所、齊藤義明さん。(写真提供/株式会社スマヒロ)

事務局の山川元希さんは「都会で働きながらTIPに参加しても良い。移り住む前に十勝のイメージがはっきりとしてくるし、仲間もできる。まずは一歩踏み出しては」とエール。廣田俊明さんは「将来的には、個人の規模から、雇用を生み地域経済を活性化させるような事業や、法人の芽が生まれるプログラムにしたい」と力強い。チームや事務局の熱さに励まされ、1人で起業する以上の構想が生まれることもあるだろう。十勝の風土と人々の情熱が育てる、新たな事業の種の数々。TIPが生み出す未来に、これからも注目したい。

事務局の帯広市役所 山川元希さん(右)と、帯広信用金庫 廣田俊明さん(左)。

とかち・イノベーション・プログラム
問い合わせ先 帯広信用金庫 地域経営サポート部
担当 廣田・後藤・人見
電話番号 0155-21-5353(受付/平日9:00〜17:00)
mail tokachiip@gmail.com