「ブラウンスイス牛コンビーフ」のパッケージの秘密
パッケージに込められた思いとストーリー
2016年10月、十勝発信の2つの食品が、農林水産省が主催するフード・アクション・ニッポンアワードの最終審査10産品に同時に選ばれる快挙を達成しました。これらのパッケージについては、Iターンで十勝にやってきた人たちが密接にかかわっていたのです。
コンビーフ缶のパッケージのリニューアルの始まり
ソーゴー印刷株式会社のプランナー湯川大輔さんは大阪府から、同社のデザイナー、高田あかるさんは旭川市からそれぞれ十勝に移住しました。十勝清水町にあるコスモスファームの安藤智孝さんからコンビーフ缶のパッケージのリニューアルについて相談を受けたのは2015年のこと。
それまでは、食品パッケージの定番である暖色系が採用されたシンプルなデザインでしたが、リニューアルにあたっての安藤さんのリクエストは、道外へアピールするため、十勝の牧場をデザインで体現したいというものでした。
北海道のイメージと十勝の力強さを活かしデザイン完成
打ち合わせの中でで出てきたのが、清らかな水が流れる大自然の中で牛たちがすくすくと育っていくこと。これは湯川さんを始めとする道外の人たちが持つ北海道のイメージともマッチすることに気づきました。髙田さんは常日頃から「十勝の風景はインパクトが違う」と感じ、その力強さをデザインに活かすことができれば、それが道外に出た時に必ず有効になると考えていました。
3人のコンセプトが一致するまでの案は20にも及び、半年もの期間を制作に費やした結果、食品パッケージではタブー視されている青系を最短に使ったデザインを完成させました。
新パッケージで価値を付加し売り上げ上昇
できあがったパッケージデザインは十勝晴れを思わせる水色を基調に、緑の牧草地とブラウンスイス牛が描かれ、商品名のコンビーフを黒字で大きく配置するという直球勝負。大手バイヤーなどからは青系のデザインが問題視されることもありましたが、このパッケージにしてからは商品を手に取ってもらえる回数が増え、以前のパッケージの10倍の売り上げになったとのことです。「食品業界に新たな価値を提案できた」と3人は胸を張ります。
希少なブラウンスイス種のコンビーフ自体の価値に、もうひと段階上の価値を付加することに成功しました。中からと外から、この2つの視点がうまく融合した時に、当たり前にあるものが魅力的に見えてきて、そこに新たな価値が生み出されるのかもしれません。