「旅のはじまりのビール」とそのデザイン

パッケージに込められた思いとストーリー

2016年10月、十勝発信の2つの食品が、農林水産省が主催するフード・アクション・ニッポンアワードの最終審査10産品に同時に選ばれる快挙を達成しました。これらのパッケージについては、Iターンで十勝にやってきた人たちが密接にかかわっていたのです。

「旅のはじまりのビール」に描かれた十勝の原風景

中札内村に暮らしながらデザインや編集を手がけるチームヤムヤムの山本学さん、えり奈さん夫妻は群馬県出身。旅が好きで、旅に魅せられた2人は、これまでに国内外のさまざまな土地を巡り、その場の空気や風土を感じてきたと言います。「旅の始まりのビール」は帯広市中心街に2016年にオープンしたホテル・ヌプカ（アイヌ語で原野の意）から発信されている、十勝の原材料を使用したクラフトビール。旅先で最初に飲むビールのドキドキとワクワクをそのまま表現したこのネーミングはチームヤムヤムの提案でした。

チームヤムヤムの山本さん夫妻。

コンセプトはその名の通り「十勝を訪れた人が最初に喉を潤すビール」。以前2人が旅したイギリスで最初に入ったパブで、地元の人たちとビールを飲みながら情報交換をした経験から生まれたもの。十勝を道東の入り口、つまり「旅のはじまり」ととらえ、ここから旅が始まり、いろいろな場所を巡り、またここに帰ってきてほしいとの願いが込められています。ラベルのイラストには、山や川、動物といった、ずっと変わらない十勝の原風景が”実線”で、開拓からの歴史の中で人が切り開いた道路が”破線”で表現されています。

コンセプトデザインを2人と一緒に作り上げたホテル・ヌプカ総支配人の坂口琴美さんは「ヤムヤムさんのイラストはとても愛らしくて、心に響くものがある。どの層にも受け入れてもらえる」と絶賛しています。

温もりや遊び心を持ち活躍するチームヤムヤムのデザイン

可愛くてほのぼのとした中にもいたずら心やユーモアがあるチームヤムヤムのデザインは、特に農産品のラベルなどで活躍の場を広げています。「十勝の農家さんは何かを生み出したいと感じている人たちが多い。そのような人たちが私たちのデザインを受け入れてくれる」と、えり奈さん。チームヤムヤムの作品が持つ温もりと遊び心は、十勝の人の創作意欲にも大きな影響を与えているようです。